JETRO世界のビジネスニュース(通商弘報)
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日本企業と共同開発、高付加価値分野へも挑戦-日本に進出 したソフト開発のNTQに聞く-

アジア大洋州課、誘致プロモーション課 2018年02月23日 ベトナム 世界のビジネスニュース(通商弘報) 日本企業と共同開発、高付加価値分野へも挑戦-日本に進出 したソフト開発のNTQに聞く- (ベトナム、日本) NTQソリューション(以下、NTQ)は、2011年にハノイで設立されたソフトウエアのオ フショア開発を主要事業としたベトナム企業。5人で創業した同社は現在、総従業員数230 人で、2016年には日本へ進出し、日本企業との共同開発も進めている。代表取締役社長の ファム・タイ・ソン氏と、営業推進部課長のチュン・ダオ・クイ・ズオン氏に、日本進出 の経緯、今後の課題と展望を聞いた(1月25日)。 売り上げの9割が日本からの受注 ベトナム企業の対外投資は増加傾向にある。2007年以降、件数は毎年80件を超え、 2016年には過去最多の139件を記録した。2016年末までの累積では943件、196億7,000 万ドルとなっている。その多くは、ベトナム国有企業による、ラオス、カンボジアといっ た周辺国への鉱業、農林水産業、電力、ガスといった大型案件だ(ジェトロ調査レポート 参照)。一方、IT企業による日本への投資もみられる。ベトナム地場IT企業の、日本から 請け負っているオフショア開発がここ数年増加傾向にある。その目的は、さらなる顧客獲 得にある(2017年9月28日記事、9月29日記事参照)。NTQもこれら企業の1つだ。 NTQは、ソン氏をはじめとした大手ベトナムIT企業出身のエンジニアによって設立され た。創業メンバーが、前職で日本企業からのオフショア開発業務に携わっていたこと、ま た同氏が日本のビジネス慣習や生活に慣れていたことから、設立当初から現在まで、売り 上げの9割が日本企業からの受注だ。英語対応が可能な経営幹部やエンジニアも少なくない ため、市場別売上高シェアでは日本に次いでシンガポール、フィンランド、英国などが続 いている。 日本法人の設立当初は東京に事務所を構えたが、2017年に横浜に拠点を移した。横浜市 が設けている外国企業誘致のための安価な事務所スペースが活用可能であることに加え、 顧客も横浜市周辺が多かったためだ。 日本法人の従業員数は現在17人(パートを含む)。そのほとんどがベトナム人エンジニ アで、オンサイト(発注元の日本企業内)でオフショア開発を行っている。 日本進出の契機となったのは、日本の顧客数と受注規模の増加だ。「それに伴い既存、 新規案件に関するタイムリーな対応が必要になってきた。加えて、送金手続きや為替リス クを軽減するために、日本での契約締結を望む顧客ニーズが出てきた」とズオン氏は解説 する。 また、日本を主要なターゲット市場とするメリットとして、日本企業の長期的なビジネ ス関係構築志向と、委託先への技術的協力を挙げる。「日本企業は、受注実績を信用度の 要素として重視するため、設立間もない外資企業が新規受注を獲得するのは難しいが、可 能性はゼロではない。また、契約に至った場合、長期的関係が築けることが多い」とズオ ン氏は語る。日本企業からの発注内容は個々の企業で独特な仕様が多く、日本企業側とし ても発注先に自社が求める仕様への理解を深めさせるため、必要な情報共有や教育を行う など、長期ビジネス関係を見越している傾向があるという。欧米系は、「初回から大きな 発注もあるが、スポットの発注が中心で、長期的関係を築きにくい傾向がある」(ズオン 氏)という。 日本企業とのビジネスに関し、「顧客からの要求に真摯(しんし)に応える姿勢が重 要」とソン氏は付け加える。納期順守や、急な仕様変更にも柔軟に対応することが、日本 企業からの信頼を高めると同氏は考える。こうした顧客対応により、新規顧客開拓の営業 はソン社長とズン課長が主に担い、1年に数回、約1週間ずつの営業活動しか行ってこな かったにもかかわらず、既存顧客からの紹介で新規顧客が増加していったという。 ベトナムと日本双方で手続き、人材面に課題 日本への進出前後で課題も出てきた。進出前に最も高いハードルとなったのは、日本で の就労ビザの取得だ。必要な条件、書類が対象者によって異なり、前例に倣うことができ なかったという。また、ベトナム側での手続きにも時間を要した。ベトナムから対外投資 する際、管轄当局から外国投資ライセンスを取得し、国家銀行にも資金送金のための口座 開設を申請する必要があり、「これら手続きが終了するまで8カ月かかった」とソン氏は振 り返る。 進出後の課題は、税務と人材確保だ。税務については、特に源泉徴収の手続きが煩雑と なっているようだ。「納品されたソフトウエアの著作性が、顧客側にあるのか当社にある のかで、源泉徴収がなされるか否かが分かれるが、税務署からは事前に書面では回答がも らえない」(同社経理担当)という。 人材についてソン氏は、「NTQジャパンで採用している人材はブリッジエンジニア。語 学力、技術、日本的ビジネスマナーの理解が必要だ。ただ、最も重要なことは、ベトナム 本社とのコミュニケーションを含めたプロジェクトマネジメント力」とし、条件を満たす 人材を常時探している。将来的には、日本人エンジニアの採用も希望している。「日本企 業は、日本人同士のコミュニケーションを好む傾向があり、日本顧客からより高い信頼、 安心感を得ることにつながる」(ズオン氏)ためだ。 また、ベトナム本社側では、「人材確保に工夫が必要」(同氏)ともいう。現地には、 日系を含めて外資企業のオフショア開発拠点の進出が進んでいる。ベトナム地場企業でも 同業他社は多く、資金力、待遇面で勝る地場大手や外資企業から引き抜きを受けることも 少なくない。 オフショア開発に加え共同開発も 「日本市場はまだチャンスが多い」とするズオン氏。IT分野にかかわらず、以前はソフ トウエア開発、IT関連サービスを内製化していた企業が、これらの開発、管理をアウト ソースし、自社の主要事業に経営資源を集中するようになっているためだと同氏は説明す る。 ただし同社は、日本からベトナムへの開発委託がピークを迎える時期に備え、AI、IoT など、付加価値がより高い分野に目を向けている。その一例として、ハノイ工科大学との 共同開発で、AIによる画像認識技術を手掛けている。 また、湘南産業振興財団とジェトロが2015年に開催した商談会を契機に、日本のエイ・ シー・ティとの共同開発で、PCセキュリティー製品「iLUTon(イルトオン)」を2017年 8月に完成させた。現在は、販売開始に必要な日本国内での許認可取得を待っている状況 だ。このように、顧客のアイデアを基に新たな製品を開発する「Proof of Concept」 (POC:概念実証)といった、オフショア開発受注から一歩進んだ事業に取り組み始めて いる。 ソン氏は「現在、グループ全体の従業員数は約230人だが、2021年までに800人に、売 り上げは現在の3億円台から12億~15億円にする」と事業拡大に意欲をみせる。日本法人 については、営業から開発、アフターサービスまでを行う「独立した企業」とすることが 目標だ。

ソン代表取締役社長(左)とズオン営業推進部課長(ジェトロ撮影) (小林恵介、川上香里奈) (ベトナム、日本) 通商弘報 d308061460617a74 ジェトロ・メンバーズの方 ジェトロメンバー・サービスデスク(会員サービス室) フリーダイヤル(平日9時~12時/13時~17時) Tel:0120-124-344 通常ダイヤル Tel:03-3582-5176 Fax:03-3582-4572 E-mail:[email protected] 「通商弘報」定期購読の方 ジェトロ海外調査計画課 Tel:03-3582-3518 E-mail:[email protected]